西海岸に来て早3か月
気づけばMBAでの初めての学期が終了した。ついこの前オリエンテーションを受けたばかりと思っていたのに、光陰矢の如しである。まだ成績開示はされていないが、曲がりなりにもミッドタームテストやグループワーク、ファイナルテストを経験してきたので、その記録を綴りたいと思う。※英語力そのものの進展についてはこちらの記事にまとめてみました。
海外MBAの授業内容
初めての学期ということもあって、私の学校ではまだ選択授業は取れず、いわゆる必修授業のみのタームとなった。つまり、ほぼすべての授業を固定のクラスメイトと受けることになる。メンバーが同じであれば、ディスカッショングループや座席も自然といつもの配置ができあがってくる。この点は初めに注意しておけばよかったと少し思う。
仲良くなるのは、やはり同じアジア出身かつ英語が第二言語である学生たち。具体的には、タイや台湾、インドネシアの学生たちだ。彼らとともに勉強したりディスカッションすることは面白く、知的好奇心も刺激される。しかし、せっかくダイバーシティに富んだ環境にいるのだから、生粋のアメリカ人やヨーロッパ系の学生とも、もう少し深く関わる機会を持ちたいと思った(仲良くなれないわけではないが、”いつものメンバー”にはなれていない)。
今学期はサマータームと呼ばれる学期で、習った授業は大きく2つ、ファイナンスとアカウンティングである。授業内容に関してだが、社費・私費問わず、日本人の社会人でMBAに来るような人にとっては、真新しい内容ではないかもしれない。
多くの日系企業では、簿記や証券アナリストなどの資格取得を若手のうちに推奨している企業もある。また、社内のMBA公募に受かるため、積極的な自己研鑽の姿勢としてこうした資格を取得している場合も多い。そのため、ほぼすべての日本人学生は、これらの授業の基礎知識をすでに持っていることが多いだろう。私費生であれば、受験料や学費を自費で負担し、さらに高い競争力を求められるため、投資銀行や戦略コンサル、公認会計士等のプロフェッショナル系のバックグラウンドやネイティブレベルの英語力を持った総合商社やコーポレートバンキング出身者が多い。したがって、必修授業レベルのファイナンスや会計の知識は既知の情報が大半ではないかと思う。
得られるもの① – 米国スタイルの授業
最初に得られるのは、米国スタイルの授業を目の当たりにすることである。純ジャパ、あるいは大学時代の交換留学レベルの海外経験であれば、米国流の授業スタイルに適応するための良い演習となる。米国スタイルとは、教授と生徒がインタラクティブに授業を進めることだ。
たとえ基礎的な知識であっても、自分の出身業界や異なる商習慣を持つ地域から来た学生の質問は興味深い。ファイナンスの授業では、CAPM理論やDCFでの企業価値算定が扱われたが、投資銀行出身者からは発展的な質問が教授に投げかけられた。「アカデミックではそうかもしれないが、実際の業務ではこういった理論の前提が成り立たない場合がある。そのため、投資銀行ではこのように工夫しているが、その点についてはどうか?」などの質問が出てくる。
得られるもの② – リーダーシップ
ファイナンスや会計の授業でリーダーシップを発揮する機会もある。各授業では毎回のようにグループ課題があり、授業で扱った知識だけでは解けない発展的な内容が含まれている。グループはランダムではなく、大学側がバックグラウンドや保有資格を考慮してメンバーを割り振る。
たいてい各グループには投資銀行でIBDやエクイティリサーチ業務に携わる学生が1人配置され、他のメンバーは非金融業界出身者という具合だ。そうなると、自然とIB出身者がリーダーとなり、他のメンバーに説明しながら課題を進める。私のような非金融業界出身者にとって、IB出身者から実務に沿った説明を受けられることは非常に有益である。また、彼らが作ったDCFモデルなどを手に入れることができるため、キャリアチェンジを考えている人には絶好のチャンスだ。
得られるもの③ – バリュー戦略
上述したとおり、金融業界出身者であれば、Summer Termに受講する必修授業でリーダー的役割を担うことができ、おのずとバリューを出すことができるだろう。では非金融業界出身者かつ非ネイティブのような私はどのようにバリューをだせばいいのか?ということを考える必要がある。当然クリティカルなものはなく、できることを少しづつするしかない。例えば、グループワーク用の会議室を予約する、みんなが集まる日を取りまとめる、最終的な回答を清書するなど。また、まだ英語が流暢に話せないからと言って黙っている場合ではなく、気になることや疑問があれば積極的にみんながいる前で聞いてみることが大事である。意外と素朴な疑問だったりが大事な要素を含んでいて、グループメンバーの理解の手助けになり感謝されたりする。MBAに来るような日本人であれば、基本的にはそれぞれの会社でそれなりの成果を上げていて、大学も有名どころ、経歴的には申し分ないパターンが多いと思う。つまり、これまでの人生の大半では、自分がリードできる側、あるいは理解が早い側だったはずだ。そんな日本エリートにとってMBAでは初めてのマイノリティ経験である。自分の立ち振る舞い戦略を意識的に考えていかないと、英語もうまく話せない奇妙なアジア人として影の薄いポジションになってしまうのである。※決して自分を棚にあげるわけではなく、かつ自分がエリートであったといいたいわけではないことを理解されたし。
これからMBAを考えている人へ
これからMBAへの入学を検討している人で、上記の私の記述に落胆されて人もいるかもしれない。なんだ、そんな内容であれば大金かけていく必要ないとか、すでに知識もあるし英語もしゃべれるので学ぶことがなさそうなど。そういった人であれば、ぜひCFAやUSCPAを取得することをお勧めする。多くの大学ではこれらの資格をもっていれば必修授業のWaiverが認められていて、いきなり選択科目を受講できるような制度がある。私の大学もそうで、実際に日本人同期にもWaiver制度をつかっていきなり発展的な授業を受けている人もいる。MBAの主たる目的は人それぞれだと思うが、おそらくFinanceやAccountingの基礎知識習得を第一目的としている人はいないので、もし今回の私の記述によってモチベーションがそがれてしまったのであれば、それは残念なことであり、Waiver制度を活用することでその事態は防げることを知っておいてほしい。※ウォートンの日本人サイトにこんなまとめ記事がありましたので、ご参考までに。
秋学期に向けて
秋学期は引き続き必修科目がメインとなり、経済、データ解析、マネジメントの3科目となる。データ解析はRを使うと聞いているが、約10年ぶりにRをさわることになりそうなので、不安である。また、これは現在進行形なのでプログラム参加の許可が出るかはまだわからないが、インパクト投資を学ぶグループにジョインすることを検討している。エッセイや面接に合格すれば参加できるプログラムであるが、それが通れば必修とは別に選択クラスをもう二つ受けることとなる。そのほかにも不動産投資の授業(こちらも選択)を受けようとしており、正直キャパオーバー感は否めないが、頑張りたい。インパクト投資については結果が出た後に、またブログ記事で内容を紹介したいと思う。
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