「なぜ、アメリカに残りたいと思うのか?」
そんな問いが頭をよぎることが増えた。MBAを通じて出会った仲間たちも、さまざまな理由でアメリカに残ることを考えている。その動機を整理しながら、あらためて自分自身の気持ちとも向き合ってみた。
最近、卒業後にアメリカに残るか、それとも日本に帰るかについて、改めて考える機会が増えた。2年生の卒業が近づき、彼らの進路を耳にすることが増えたのが一因だろう。また、夏のインターンを経て、クラスメイトたちと今後の進路について話す機会も多くなった。
正直に言えば、僕がMBAに来た理由のひとつは、自分のキャリアに行き詰まりを感じていたからだ。だからこそ、卒業後にどの国で、どんな業界で働きたいのかという明確なビジョンは、今のところ持ち合わせていない。そんな中で、アメリカでの就職を目指している仲間たちの話を聞くと、その動機には実にさまざまな背景がある。今回は、それらの声を整理しておきたいと思う。
・単純にアメリカが好き
米国の文化が好きで、自分にフィットすると感じている。これは特に日本人の中でよく聞く理由の一つだ。母国の文化よりも、アメリカの雰囲気や空気感に魅力を感じる人たち。中には英語そのものが好きという人もいる。
彼らは自然と現地の生活に溶け込んでいき、カルチャーショックも少ない印象がある。自分のように日本人的な感覚が抜けないタイプからすると、正直羨ましい限りだ。そうした人たちは、当然のように卒業後もアメリカに残れるよう、VISAスポンサーのある企業を探している。
・自国で背負うプレッシャーから逃れたい
これも日本人には多いと感じる。日本では「成功」の定義が狭く、MBAに大金を投じた以上は、投資銀行やPE、戦略コンサルといった“王道”のキャリアに進まないと元が取れないという空気がある。社費派遣で来ている学生であれば、なおさら会社への“恩返し”として出世街道を歩まなければというプレッシャーが強い。
でも、本当は卒業後に起業したい、NPOに行きたい、という想いが芽生える人もいる。だけど日本に戻ると、周囲の目が気になって、それができない。MBAに来るくらいだから、それまではある程度「順当な人生」を歩んできた人が多いわけで、なおさら周囲の視線を気にしてしまうのだろう。
一方で、アメリカに残れば話は違う。たとえ無名なスタートアップでも、業界を変えてアナリストからキャリアを再スタートしても、日本社会の「物差し」からは外れる。だから比較されにくいし、むしろ漠然と「すごい」と見られることすらある。進路選択の第一理由にはならなくても、心理的にはこうした側面が確実にあると感じる。
この考えは、どこまでいってもマイノリティという小市民さんが書かれたこの記事の一部の内容に近く、私もこのブログを読んだときにすごく納得してしまいました。
・自国に職がない
高度専門職に対するジョブマーケットが自国に十分整っていない、という話もよく聞く。たとえば、僕のクラスメイトにインドネシア人がいて、彼はBioscienceで修士号を取っている。しかし自国では、そのバックグラウンドにふさわしい職がほとんどなく、アメリカでしかそれに見合う給料やキャリアパスを得られないと言っていた。
・家族、子供への配慮
この年代になると、家庭を持つ学生も少なくない。留学前は「2年間だけアメリカ」と決めていたものの、パートナーがアメリカ生活を気に入ってしまったという話はよく聞く。SNSに現地での生活を発信して、人気インフルエンサーになってしまった人もいるくらいだ。
また、子供の教育の観点から、英語を自然に話せる環境で育てたいという理由もある。実は僕も在学中に子供が生まれたので、その気持ちはとてもよくわかる。
・最後のチャンス
一度日本に帰ってしまえば、もう二度とアメリカで長く暮らすチャンスはないかもしれない。ビザの問題もあるが、それ以上に30代後半や40代で海外生活を再構築するのは相当ハードルが高い。だからこそ、「特別アメリカが好きというわけではないけど、最後のチャンスだからやってみたい」と考える学生も少なくない。
そして、僕はどうするのか
そんな話を聞きながら、僕自身が共感した理由は大きく3つある。
1つ目は、日本で背負うプレッシャーから逃れたいということ。僕はけっこうミーハーで、人と自分を比べては落ち込むタイプだ。日本に戻れば、またそんなラットレースに巻き込まれるかと思うと、正直うんざりする。アメリカでキャリアを築いてしまえば、日本の基準からは自動的に外れ、比較されないで済む。それは精神的に大きなメリットだ。
2つ目は、子供のこと。英語学習に膨大な時間をかけ、MBAまで来ても、やっぱりネイティブにはかなわない。もしその時間を他のことに使えていたら、と思うことはある。ちなみに僕の姉は帰国子女で、英語の方が日本語よりも得意なレベル。彼女を見ていると、英語をネイティブレベルで話せることは本当に大きなアドバンテージだと思う。自分の子供にも、それを与えられるなら、そうしてあげたい。
3つ目は、「最後のチャンス」という感覚。僕は保守的な性格で、新しい環境に飛び込むのが得意ではない。だからもし一度日本に戻ってしまえば、たぶんもう海外に長く住むことはない。そう考えると、今ここで少しでも長くアメリカに残って、何かに挑戦してみたいという気持ちがある。
こんな風に、まだ答えが出たわけではないけれど、自分なりに少しずつ気持ちを整理しているところだ。
コメント